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ごきげんよう!
お金大好きソロトリライター、ヤマダイクコです。
お金は稼ぐもよし、貯めるもよし、使うもよし、見るもよし。
今年の夏(2024年7月)、日本では20年ぶりに新しいデザインの紙幣が発行されました。
日本の紙幣は地味な……もとい、落ち着いた色合いですが、肖像の人物、植物、漢字・漢数字、繊細かつ洗練された印刷、しなやかで美しい紙など、小さな紙に日本らしさが詰まっています。
国や地域によって、紙幣の大きさやデザイン、素材(紙以外にも、プラスチック素材のポリマー紙幣など)が違います。
国内外でキャッシュレス決済の普及が進んでいますが、現地の紙幣&硬貨を手にしたり、お店で使ったりすると「外国に来たんだな」と実感します。
硬貨(コイン)の種類や額面がなかなか覚えられなかったり、厚さや音が違ったりするのも海外旅行ならでは。
さて、みなさんはお金が欲しくて旅に出たことはありますか?
今回は2013年夏、「ニルスのふしぎな旅」のデザインの紙幣が欲しくてスウェーデンに行った話です。
ニルスが旅した国に行ってみたい!
夏は北欧のどこかに行きたいと考えてガイドブックやネットで調べていた時、スウェーデンの紙幣の写真を見ました。
なんと当時の20クローナ紙幣は「ニルスのふしぎな旅」の柄だったのです!
※以下「ニルス札」とします。
子どもの頃アニメを見て、大人になってから本を読んで大好きになった作品。
わんぱくでいたずらな少年ニルスが、小人の妖精(トムテ)の魔法で小人にされ、渡り鳥のガンの群れとともにスウェーデンをぐるっと一周旅をする物語です。
仮に日本に置き換えると、往路は南さつま市(鹿児島県)を出発して、各地に立ち寄りながら旭川市(北海道)まで行く感じの距離感。
果てしない!
作者のセルマ・ラーゲルレーヴは女性初、スウェーデン人初のノーベル文学賞を受賞した作家。
「ニルスのふしぎな旅」は、今から100年以上前に初等教育の地理読本として書かれたそうです。
ニルスの旅を軸に、スウェーデン各地の地理、歴史、伝承、困難に立ち向かう人々の生きざま、スピリットが織り込まれています。
紙幣にはガチョウのモルテンに乗った小人のニルスが、空高く旅立つ場面(南部の肥沃な田園地帯)がカラフルに印刷されています。
紫色のインクで印刷されたセルマ・ラーゲルレーヴの肖像、その面構えに憧れる!
喉から手が出るほど欲しい!
しかも、2015年から新紙幣に切り替わるため、ニルス札入手のチャンスは限られています。
欲望に忠実に、旅行先はスウェーデンに決定。
2013年当時は1クローナ=約14円、20クローナ札は一番低額の紙幣で、約280円くらいのイメージです。
※スウェーデンクローナの略号はSEK。
ちなみに、現在の20クローナ紙幣はスウェーデンが世界に誇る児童文学作家アストリッド・リンドグレーンの肖像と、「長くつ下のピッピ」のデザインです。
欲しい!
ピン札が欲しい!
旅行中、買い物をしたらおつりの中からニルス札を抜いて封筒に保存する、というのを繰り返しました。
どんどん集まる、しわしわのニルス札。
なんでみんなしわしわなの?
低額紙幣だからよく使われるのか、あるいは雑に扱われやすいのか?
明日は出国、時間がない。
ピン札は欲しいけれど、できる限り交渉したくない。
※ピン札(さつ):しわや折り目、汚れのないお札。(新札:未使用のお札。)
ひとしきり迷いましたが、ホテルのフロントがフレンドリーな雰囲気だったのを思い出しました。
勇気を出して、スタッフに相談してみよう。
話すのは苦手なので、ホテルのメモ用紙につたない英語(中学レベル)で思いのたけをつづりました。
Please change these money clean 20kr.
I want to present for my Japanese friends because I like “Nils Holgerssons underbara resa genom Sverige”.
※このお金をきれいな20クローナ札に替えてください。私は「ニルスのふしぎな旅」が好きなので、日本の友人にプレゼントしたいのです。
※友人をだしに使いました。
こんなに一生懸命英作文したのは大学受験以来かもしれません。
言葉は「伝えたい」という気持ちが大切ですね。
クオリティじゃない、パッションだよ!
メモ用紙を手にホテルのフロントに向かいました。

ピン札はない?
ホテルマンにメモを渡すとすぐに高速で音読され「オ~!ハッハッハ~」と笑いながらフロントにあるニルス札を出して見せてくれました。
顔から火が出る。
しかし、スウェーデン語のタイトルがネイティブの発音で聞けた。
スウェーデンに来てよかった!
※高速すぎてほぼ聞き取れず。
よし、ピン札は諦めよう!
たいへんよくできました!
そう思っていたら、「駅の両替屋にあるかも」と言いながらメモ用紙の裏面に店名を書いてくれました。
まさかの延長戦、アドバイスに従い駅の両替屋に行ってみました。
そして、両替屋の窓口であのメモを恐る恐る差し出しました。
にらまれました。
不機嫌そうに英語で「国内通貨から国内通貨への両替はしていません」と説明。
仕事の邪魔をするなという雰囲気を漂わせつつ、深いため息をつきました。
ですよねー!よし、ピン札は諦めよう!
礼を述べて逃げようとしていたら、「But」という声が聞こえました。
「でも、特別な事情だから、今回だけ……ですよ」
それからまた深いため息をつき、紙幣を1枚ずつ取り出して念入りに確認(何度か私に見せて「これはOK?」とアイコンタクト)、きれいなニルス札に交換してくれました。
「規則だからできません」と断られると思ったのに。
ひどく感激して、お辞儀とお礼の言葉(Tack så mycket!)を繰り返しました。
※Tack så mycket.:どうもありがとう。(スウェーデン語)

ピン札じゃなくても
喜び勇んでホテルに戻ると、ホテルマンにも感謝の気持ちを伝えたくなりました。
新しいメモ用紙に両替屋での経緯と心からの感謝を英作文して、フロントに向かいました。
高速で音読されました(2回目)。
それから「オ~!ハッハッハ~」と笑って、メモ用紙にニコニコマークを書いてくれました。

客室に戻り、机に並べたきれいなニルス札を眺めながらお茶を飲みました。
欲しいものを手に入れた満足感。
旅先での出会い、交流、思いがけない優しさ、ユーモア、思いやり、色々なことを思い出して胸がいっぱいになりました。
私は日本で、旅行者に対して、彼らと同じように行動できただろうか?
帰国後、お土産のニルス札を渡したら、ある人から「しわしわで使用感がある方が、本物のお金って感じがする」と言われました。
そっち?
それではごきげんよう、よい旅を!