【高知一人旅】愛と欲望の文学散歩!夏目漱石の門下生「寺田寅彦」の故郷へ

【高知一人旅】愛と欲望の文学散歩!夏目漱石の門下生「寺田寅彦」の故郷へ

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ごきげんよう!
千円札の肖像といえば夏目漱石のソロトリライター、ヤマダイクコです。

明治末期~大正初期に活躍した作家だということを知る前に、素敵なヒゲのイメージが刷り込まれました。
※夏目漱石の肖像の千円札は、昭和59(1984)年11月1日発行開始、平成19(2007)年4月2日発行停止。

夏目漱石の私邸には個性豊かな門下生が集いましたが、中でも別格的な存在が寺田寅彦。
※以下、「寅彦」(敬称略)とさせていただきます。寅年寅の日生まれの末っ子長男。
寅彦は第五高等学校(現在の熊本大学)時代に夏目漱石から英語を学び、生涯にわたって親交を深めました。

東京帝国大理科大学や理化学研究所で物理学の研究に携わり、関東大震災後には被災地を調査しています。
「天災は忘れた頃にやって来る」の警句は、寅彦の言葉がもとになっているのだとか。

ちなみに、命日である12月31日は「寅彦忌(とらひこき)」、来年(2025年)の大晦日に没後90年となります。
寅彦の故郷である高知市には、高知県立文学館文学館(寺田寅彦記念室)や寺田寅彦記念館、寺田家の墓所などがあります。

つまり、私にとって高知市は寅彦の聖地的&テーマパーク的な場所!
今回は、2006年9月のわくわく寅彦めぐり(高知一人旅)をお送りします。


珈琲党&超甘党

20代の頃、夏目漱石の小説は苦手だが漱石(本人)が面白いと気がつきました。
弟子たちが書き残したエピソードが面白い、特に寺田寅彦関連のものが面白い。

金の鉱脈を見つけた!という勢いで、図書館に行っては関連書を読み漁り、「漱石全集」を1冊借りて帰る暮らしが始まりました。
※ハードカバー、菊版の「漱石全集」(岩波書店、1960年代)は分厚くてずっしり重い。

「漱石全集」と「寺田寅彦全集」の同時期の書簡の巻を左右に並べて、寅彦宛、漱石宛の書簡を往復書簡集的に拾い読みするのに熱中したあの頃。
※親しい相手への手紙にはプライベートもユーモアも本音も込められていて面白い。

寅彦の甘党エピソードには事欠かないのですが、学生時代は机の下に砂糖の壺を置いていた、具が黒砂糖、外側に白砂糖をまぶしたおにぎりを食べていたなどのハイレベルな話も残っています。
銀ブラが好きで、銀座の喫茶店でコーヒーやケーキを味わっていたと知った時には親近感がわきました。

戦前(特に明治末期~大正期)の知識階級の暮らしぶりも興味深く、ずぶずぶと深みに、人物から人物へ芋づる式にハマっていきました。
果てしない。


高知駅到着!

寅彦熱最高潮の2006年夏、鉄は熱いうちに打つべく高知行きを決意。
出発当日は仕事、帰宅後一休みしてから駅に行き、23時過ぎに寝台列車に乗車しました。

寅彦グッズが欲しい、せっかくだから墓参りしたいなどと欲望に胸を高鳴らせつつ電車を乗り継いで約10時間、ついに高知駅に到着。
着替えなどの荷物は駅前のコインロッカーに預けました。

ロッカーの番号は「108」、煩悩の数!
※だいぶ浮かれていました。

まずはこの旅のメイン、高知県立文学館を目指します。
文学館には寺田寅彦記念室があるし、ミュージアムショップで寅彦グッズ(本、絵はがき、オリジナルグッズなど)が買えるはず!

晴れ渡った空の下、路面電車などを眺めつつブラブラ歩いていくと、露店がずらっと並んでいました。
高知城に続く追手筋(おうてすじ)という通りで毎週日曜日に開催される「日曜市」です。

野菜や果物などの食料品、特産品、家庭用品など多種多様な店が並ぶ中で、名物の「冷やしあめ」(ショウガ風味の甘い飲み物)を見つけて購入。
嗚呼、寝不足の頭と体に甘味がしみわたる。


高知県立文学館

糖分摂取の効果もあり、鼻歌&スキップせんばかりのテンションで歩き、ついに到着しました。
文学館は臨時休館でした。

高知県立文学館、臨時休館
痛恨のミス!ご覧の通りのシャットアウト。旅行前に公式サイトで休館日を調べようね!(1/3)

茫然自失。
なんで?鉄道で約10時間、それに伴う交通費をかけて高知まで来たのに?

何回見ても変わらない、貼り紙の「臨時休館」の文字、完全に閉まっているシャッター。
しばらくするとフリーズした脳がじわじわと働き始め、ようやく状況を理解しました。

高知滞在中には開館しない。
従って寅彦グッズは買えない。

大きなため息をつき、次の目的地に向かおうと決意して数歩進みましたが、後ろ髪を引かれる思いで振り返りました。
シャッターは完全に閉まっていました。

旅行前にインターネットで調べておけばよかった!
後悔先に立たず。
※博物館等の施設は、夏のイベントや特別展が終わると展示替えのため臨時休館になることがあるので要注意。
奥歯を強く噛みしめながら、寺田寅彦記念館に向かいました。


寺田寅彦記念館

寺田寅彦記念館は寅彦が4~19歳の頃に暮らした家を復元した建物で、風通しがよく開放的な日本家屋。
旧寺田邸は戦災で大部分が焼失しましたが、残っていた設計図をもとに昭和58(1983)年に復元したそうです。

いざ、推しのお宅訪問!
玄関で靴を脱ぎ入館、家の中や庭を眺めながら、このような環境で寅彦が育ち、多感な年頃を過ごしたのかと感慨にひたりました。

施設の方と挨拶した時に「文学館が休館していました」と愚痴をこぼしたら(言わずにはいられなかった)、慰めの言葉をかけてくれました。
それから、寅彦についての話や建物や庭に関する話をあれこれ教えてくれました。

寅彦と夏子の結婚式の時には、襖を取っ払って広くした座敷に親戚や近所の人が大勢集まったそうです。
当時、寅彦は数え年で20歳(学生結婚)、妻の夏子は15歳。

真夏に婚礼衣装、しかも式が終わってから炎天下、近所に挨拶回りに出掛けたのだとか。
たくさん本を読んできたつもりでしたが、現地で話を聞くと、イメージの解像度がぐんと上がりました。

施設の方が話している時の「寅彦先生」という呼び方から伝わってくる親しみと敬意。
共通の恩師の思い出を語り合うような、心温まる時間を過ごしました。

寺田寅彦記念館
明治30(1897)年7月24日挙式。祝宴は7月26日まで続いた。(2/3)

寺田家墓所

翌日、高知駅から少し離れた場所にある寺田家墓所へ出掛けました。
はりまや橋の近くでバス停を探してうろうろしていたら、タクシーがキッ!と止まりました。

「えっ、乗りません……」と思っていると、車内から運転手さんが「どこいくの?うんうん、そのバスならあっちの通りに行きぃや~!」と教えてくれました。
土佐弁ネイティブの生き生きとした言葉のリズムに感動。

礼を述べてから再び歩き、次に見えたバス停を確認していたら、またタクシーがキキッ!と止まりました。
「違う違う!もう1つ向こうのバス停!」

さっきの運転手さんでした。
偶然なのか、心配して見守ってくれていたのかはわかりませんが、四国遍路の「お接待」の精神を感じました。

正しいバス停から乗車、寺田家墓所の最寄りのバス停で下車、案内板を頼りに住宅地を抜けて山道をのぼっていくと、墓所がありました。
寺田寅彦記念館で「墓所はやぶ蚊が多いから気をつけて」と言われていたので草深い場所を想像していましたが、きちんと手入れされ、さっぱりとした雰囲気でした。

墓石の正面には「寺田寅彦之墓」の文字、他の3面には漱石門下で親しい友人だった小宮豊隆による墓誌がびっしりと刻まれています。
ああ、寅彦は実在したのだ!

漢字&カタカナかつ旧字体&旧仮名づかい、ところどころ読めない字もあります。
経歴と人物評から伝わってくる敬愛と寂寥。

墓参りの作法を予習しなかったのを申し訳なく思いつつ、感謝の気持ちを胸に墓前で手を合わせました。
そして、高知で育ち、高知で眠る寅彦に思いを馳せました。

寺田寅彦 墓
道が舗装されていなかった。やぶ蚊にご用心!(3/3)

その後、山を下りてバスに乗り高知県立牧野植物園に向かいました。
牧野富太郎、我が推し植物学者!

牧野植物園を満喫、ミュージアムショップで物欲が爆発して「牧野富太郎写真集」などの本や絵はがきなど、富太郎グッズをがっつり購入。
高知大好き!

それではごきげんよう、よい旅を!


おわり

最後までご覧いただきありがとうございました!

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