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目次
ごきげんよう!
橋大好きソロトリライター、ヤマダイクコです。
新しき橋には新しき橋の、古き橋には古き橋の魅力があるもの。
よし、カレル橋を見にちょっとプラハまで行ってみるか?
※カレル橋:ブルダバ(モルダウ)川に架かるチェコ共和国の首都プラハ最古の石橋。1402年完成、全長約520m、幅約10m、欄干には30体の聖人の彫像が並ぶ。
そんな思いつきから始まった2016年夏のプラハ旅行。
まさかの乗り継ぎ空港で素敵な出会いに恵まれました。
パリ シャルル・ド・ゴール空港で乗り継ぎ
思い立ったが吉日。
旅の計画&準備スタート、休暇申請、6月上旬に航空券とホテルの予約、7月上旬の渡航までトントン拍子で進みました。
私にとって、航空会社選びは旅の楽しみの一つ。
日本からチェコへの直行便はないので、他国の空港で乗り継ぐことになります。
あれこれ迷った結果、行ったことがない空港を経由する、乗ったことがない航空会社の便に決めました。
エールフランス航空、羽田空港22:55発、シャルル・ド・ゴール空港経由、プラハ空港9:05着(到着まで約17時間10分、乗り継ぎの時間を含む)。
※時刻は現地時間です。
以前パリに行った時はロンドンからユーロスター(高速鉄道)を使ったので、シャルル・ド・ゴール空港に行ったことはありませんでした。
これまでの海外旅行は成田空港から出発していたので、羽田空港の国際線(しかも夜の出発)は初めて。
エールフランス航空も初めて。
機内食がおいしいらしい、エコノミークラスでも食前酒にシャンパンが飲めるらしいとの噂にときめきました。
シャンパン大好き!
出発の日、楽しみすぎて早めに自宅を出発したら、搭乗6時間前に羽田空港に到着……早すぎた。
※国際線のチェックインカウンターでは出発時刻の2~3時間前から手続きができるようです(航空会社による)。
第3ターミナルで「はねだ日本橋」(総檜造りの木橋)を見に行き、食事やウィンドーショッピングなどを楽しみ、それでも時間があるのでマッサージ屋で体をほぐしてもらいました。
羽田空港大好き!
たっぷり夜景を楽しんでから搭乗。
パリまでの約12時間半のフライトは、文庫本を読んだり、機内食やシャンパンを味わったり、仮眠を取ったり、のんびり過ごしました。
現地時間午前4時半頃、ついにシャルル・ド・ゴール空港に到着。
外は真っ暗でした。
静かに漂う動揺
初めての場所、特に空港のような巨大な建物の中は方向がつかみにくいので、旅行の前にフロアマップ等で予習します。
しかし、予定通りにはならないのが旅というもの。
通路を歩く渡航者たちから、いつもとは違う少しざわつくような気配を感じます。
歩きながら聞き耳を立てて情報収集してみると、どうやら通路が一部封鎖され経路変更になっているらしい。
オーケー落ち着け、私。
私たち(渡航者)は乗り継ぎをしたくて、空港は私たちを乗り継ぎさせたいはずだから大丈夫だ。
心を鎮めるため、脳内のスクリーンに「私はイワシ、大群の中の1匹」の映像を上映。
周囲の渡航者の流れに乗るよう心がけました。
入国審査にたどり着くと、開いている窓口は両端の2つだけでした。
並ぶのは右の列?左の列?正解はどっち?
とりあえず右の列(近い方)に並んでみました。
急いでいないし、混雑していないし、むしろこの時間に窓口が2つも開いていてよかったと感謝すべきなのか?
もやもやしていたところに、1人の女性が歩いてきて日本語でアナウンスしました。
「どっちに並んでもいいみたいですよ~!」
右の列、左の列、どちらも正解!
周囲の人たちが一様にほっとした表情になり、張りつめていた空気がふわっと和らいだような感じがしました。
天使が舞い降りた……!
彼女は自分が得た情報を自分や連れの人だけでなく、たまたま居合わせた見ず知らずの人たちにも共有してくれたのです。
その行動力と勇気、ボランティア精神に胸が熱くなり、心から感謝しました。

旅は道連れ
入国審査の後で、近くにいた女性と少し話しました。
※ナツさん(仮名)とします。クール。
「2Fターミナルってどっちですかねぇ?」
「まぁ、迷ったとしても、出発まで3時間もあるから大丈夫でしょう」
すると年上の女性から「2Fターミナルへの行き方ってわかりますか?」と声をかけられました。
※ハルさん(仮名)とします。社交的。
一人旅の女性が3人、同じ2Fターミナル、ゲートも近いことがわかったので、一緒に行くことになりました。
話しながら歩いていたら、ハルさんが「時間があるし、お茶でもしません?」と提案、ナツさんと私も同意し、セルフサービスのカフェに入りました。
三人寄れば寝落ちなし。

カルチャーショック!
テーブルが決まると、ナツさんが「私、荷物番してますね。お先にどうぞ~」と言いました。
ふとレジカウンターを見ると何人か並んでいたので、「それなら(ナツさんの分も)私が買ってきます!何にしますか?」と聞きました。
「ビールお願いします」
即答でした。
朝、いや夜明け前からビール?!
もしかして聞き間違え……いや、聞き間違えようがないのでは?
困惑する私のことなどはお構いなしで、ナツさんは財布からスッとお札を出しました。
「10ユーロあれば足りると思うんで」
この眼は本気だ。
揺らぐことのない強い意志を受けとめ、10ユーロ札を手にレジへと向かいました。
飲み物を購入し、3人とも着席。
ハルさんの前にはジュースのボトル、私の前にはホットコーヒーの紙コップ、ナツさんの前には缶ビール。
ナツさんはためらうことなく缶ビールを開けると、ゴクゴクと飲みました。
「おいし~!旅の楽しみなんですよね~!」
清々しい笑顔!
かっこい~い!!
朝からビールを飲むことを、休日や旅行中の楽しみにしている人もいる。
旅の楽しみ方は十人十色。
旅は、私が考えているよりもずっとずっと自由で、もっともっと自由に楽しんでいいのだ。
分岐点
2時間ほど茶飲み話を楽しみました。
これからどこへ行くのか、何があるのか、何をするのか、お土産の話、食べ物の話、プライベートの話、などなど。
この場限りと想定される人物に対して、必要以上に自分の身分や情報をさらけ出さない。
相手のことを探りすぎない。
2人の絶妙な距離感と大人の会話術に感服。
ハルさんの搭乗の時刻が近くなったので、3人でカフェを出ました。
ゲートに向かうと夜が明けていました。
ガラスの天井から光が入り、フロア全体がキラキラと輝いているように見えました。
ここからが旅本番、目的地まであと一飛び。
ハルさんもナツさんも輝くような笑顔でした。
「よい旅を!」
「また日本で会いましょう」
お別れの前に3人でかわるがわる握手をしました。
颯爽と歩く彼女たちの姿は、やがて人混みの中に消えていきました。

一期一会。
長い人生の中でほんの一瞬だけ交差した奇跡のような時間。
1人に戻った私は、晴れ晴れとした気持ちでプラハ行きの飛行機に乗り込みました。
それではごきげんよう、よい旅を!