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目次
ごきげんよう!
スープ大好きソロトリライター、ヤマダイクコです。
世界の三大スープは「トムヤムクン」「ふかひれスープ」「ブイヤベース」「ボルシチ」とのこと……4つ?
世界各地においしいスープがたくさんあるので3つにしぼるのは難しいですね。
ちなみに、我が家の三大スープは「豚汁」「沢煮椀(さわにわん)」「ミネストローネ」です。
大鍋にどっさり作る具沢山のスープは、主食(ご飯、パン、麺など)との相性抜群!
※沢煮椀:せん切りの野菜と豚肉で作るすまし汁。鶏肉でもおいしい。
旅先でたっぷり街歩きした後に味わう温かいスープは格別。
歩き疲れた体に栄養がじんわりとしみわたっていく感じがします。
旅におけるスープの重要性&可能性は無限大。
今回は2014年夏のノルウェーの旅で味わったスープを紹介します。
※スープや汁物の定義(またはシチューや煮物との線引き)は難しいので、このコラムでは「汁気の多い食べ物」とします。
※当時の通貨は1NOK(ノルウェークローネ)=約19円とします。
旅行中の食費節約としてのスープ
学生時代の観劇旅行ではチケット&物販最優先で「食べ物はなんでもいい、安い方がいい」という方針でしたが、社会人生活が落ち着くと「ご当地名物を食べてみようかな」と考える余裕ができました。
しかしここはノルウェー、物価の高さを誇る北欧の国。
消費税(付加価値税)なんと25%!
※2024年1月現在。軽減税率あり(飲食料品は15%など)。
レストランのメニューを見て確実に読めるのは値段(アラビア数字)ですが、頭の中でざっと日本円に換算すると全体的に高い感じがします。
もしかして、値段が2~3倍になる魔法がかけられているの?
※個人の感想です。
どうやらsuppe(ノルウェー語)/soup(英語)、つまりスープは他の料理と比べて安いようです。
しかもパン付き。
そうだ!スープをたのもう!
オスロ、魚屋併設のレストランの【フィッシュスープ】
さて、北欧の各地に様々な郷土料理があり、様々なスープがありますが、サーモンなどのクリームスープもその一つ。
ノルウェーの首都・オスロに、フィッシュスープが評判のレストランがあると聞き、行ってみることにしました。
魚屋に併設のレストランなので、魚屋のスペースに新鮮な魚介類が並んでいるのを眺めてからレストランに入りました。
まったく聞き取れない言葉(他の客が話すノルウェー語?)にアウェーを感じつつ、カウンターチェアにぽつんと座って待っていると、スタイリッシュな白い皿が運ばれてきました。
魚屋の新鮮な海の幸をふんだんに使ったスープは、空腹もあいまってキラキラと輝いて見えました。
スプーンで一口、魚介類の旨味が濃厚なミルクスープに溶け込んでいます。
おいしい、高いけどおいしい、高いけどボリュームたっぷり、さすがノルウェー、漁業大国!
高いけど食べに来てよかった!
夢中になって食べていると、異国での心細さや緊張が薄れていき、活力がわいてきました。

オスロ、宿泊していたホテルのレストランの【本日のスープ】
フェリーでヴァイキング船博物館やノルウェー民俗博物館に行き、ホテルに戻って一休み、夕食を買いに出かけようとしたら突然の土砂降り!
ずぶ濡れになるのは嫌なので、急遽ホテルのレストランに入りました。
値段を比較して「本日のスープ」を注文してみたものの、語学的な問題によりスープの詳細は不明。
ドキドキしながら待っていると、店員が大きな寸動鍋から大きなレードルで気前よくスープをすくい、白い皿に盛りつけているのが見えました。
素朴な見た目の、野菜と肉のスープ。
よく煮込まれた牛肉(牛筋肉?)の出汁、ハーブの香りほんのり、ほどよい塩加減。
旅行中に不足しがちな野菜をたっぷり食べられるのがありがたい。
毎日食べたい!
※日替わりのスープです。
上機嫌で食べていると、店員がマンホールのふたのように丸くて大きなパンを運んでいました。
よく見ると、小さな丸いパンの集合体でした。
ホテルの朝食のパンが不規則にちぎれているのが不思議だったけれど、これが正体か!
2015年頃にパンのレシピ本などでちぎりパンがブームになりましたが、私がノルウェーに行ったのはその前年。
コンビニなどで横一列に数個の山があるちぎりパンを見たことはありましたが、大きな円形のちぎりパンを見たのは初めて。
雨のおかげでおいしいスープを食べることができ、ついでにちぎりパンの謎も解明して大満足。
食後、これからはホテルを選ぶ時にレストランもチェックしようと心に決めました。
おいしいレストランがあるホテルは、朝食がおいしい……はず!

推定【ラップスケウス(ラプスカウス)】
あの時に食べた「本日のスープ」が気になって、ネットで調べてみました。
完全一致ではありませんが、ノルウェーの郷土料理「ラップスケウス(ラプスカウス)」が近いような気がします。
鍋にブイヨンと小さく切った牛肉、角切りにした根菜類を入れ、弱火で1~2時間じっくり煮込み、塩コショウで味付け。
地方や家庭によって食材や料理法にバリエーションがあるようです。
寒い季節に、暖炉やストーブでコトコト煮込む家庭の味なのかもしれません。
ベルゲン、【バカラオ(干しダラ)】で大儲け!
ノルウェー第二の都市・ベルゲンはフィヨルド観光の拠点であり、落ち着いた港町。
カラフルな木造倉庫が並ぶブリッゲン地区(世界遺産)や北欧最大級のベルゲン美術館(コーデー)など、あちこちでハンザ同盟の繁栄がうかがえます。
ベルゲンで食べてみたいと思っていたのが「バカラオ」。
タラを塩漬けしてから天日干しした干物(干しダラ)、またはそれを用いた料理です。
14世紀ハンザ同盟に加盟したベルゲンでは、ハンザ商人が北ノルウェー産の干しダラの輸出を独占しました。
栄養価が高く、保存性が高いことから、大航海時代や三角貿易で盛んに取り引きされました。
長期にわたる航海中の食料としても消費。
南ヨーロッパ、スペインやポルトガルの植民地であった中南米、西アフリカなどでも食べられるようになったそうです。
ベルゲン、魚市場のトマト色のスープ
ベルゲン湾沿いのブリッゲン地区を見学してから魚市場へ。
赤いテントのお店が並んでおり、魚介類などの食料品はもちろん、その場で食べられる料理もあります。
少々ぶっきらぼうな言葉遣い(強めの巻き舌のRの発音)や、ちゃきちゃきと働くお姉さん方などから漂う漁師町の雰囲気にときめきました。
魚市場に行けば、おいしいシーフードが食べられるはず。
魚介類のスープ、できればバカラオ(干しダラのトマト煮込み)を食べてみたい。
あちこちの店をのぞきながらぶらぶら歩いていたら、トマト色のスープが入った大きな両手鍋を見つけました。
バカラオに違いない!
すぐさま「あれをください!」と指差して注文。
店員がレードルでスープをすくうと鍋の底に沈んでいた具が現れました。
タラらしきものは一切ありませんでした。
席に着き、皿の前で戦々恐々。
トマトスープの中には海老、キュウリ、タマネギ、そして小さなご飯(長粒種)のかたまりが2つ。
食べてみると、キュウリには酸味があり(ピクルス?)、タマネギは生っぽくて辛みが強く、スープにはトマトの酸味と強めの甘さ(砂糖?)があり、米はスープをよく吸っている。
ぬるい。
しかし、海老はぷりっぷりでめっちゃうまい!
海老のうまさに、逆に困惑する。
美味/不味というよりも、期待した味と実際の味のギャップに驚きすぎて、自問が止まらない。
なぜこれをたのんだ?!
もしかして、これはおいしいのか?!
自分の中にあった味の評価基準が崩壊、思わず近くに座っていた日本人男性(推定)に「一緒に食べて!」「この味、どう思う?」と声をかけそうになりました。
しかし、ギリギリのところで踏みとどまりました。
落ち着け。
たかがスープに大の大人が踊らされてどうする。
突然知らない人から食べかけのスープを「食べろ」と言われたら気味が悪いに決まっている。
その後も動揺は続きましたが、無理やり平静を装い、とりあえず海老を食べ続けました。
強烈な味には、人間を動かす力がある。

食事を終え、ホテルに戻る途中でスーパーに寄りました。
味覚をニュートラルに戻すべく、塩味のポテトチップスとオレンジジュースを買いました。
一人旅のデメリット:感動を分かち合う人がいない
一人旅のメリット:感動を独り占めできる
その後、バカラオを味わうことなく帰国しました。
嗚呼、憧れのバカラオ。
それではごきげんよう、よい旅を!