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ごきげんよう!
歌舞伎大好きソロトリメンバー、ヤマダイクコです。
歌舞伎座に通い始めて幾十年、寄る年波により猛暑の季節に歌舞伎座まで行くのがしんどくなってきました。
心に体が追いつかない。
どうにかゆったり観劇したいと思い、2025年8月は劇場に近い築地のホテルに前泊することにしました。
ついでに観劇後にもう1泊。
快適と贅沢はお金で買える!(ある程度は。)
連泊で時間に余裕があるので、築地を散策してみることにしました。
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目次
おひとりさまフォトラリーin築地
東銀座駅界隈から銀座方面はよく歩きますが、反対側の築地方面にはあまり行ったことがありません。
ちょっと検索してみたら、聖路加国際病院の周辺には記念碑がいっぱい。
1869(明治元)年~1899(明治32)年頃、築地に外国人居留地があり、当時は西洋風に彩られたハイカラな街並みだったそうです。
宣教師・医師・牧師などの知識層が集まる文教都市、病院やホテル、ミッションスクールなども作られました。
さて当日、東京メトロ築地駅を出ると天気は快晴、じりじりと照りつける日射しと暑さに散策を終了したくなりました。
「築地本願寺だけでも見よう」と心を奮い立たせて向かうと、目の前には広大な敷地、荘厳かつ圧倒的スケールの本堂、異世界に来たような気分です。
現在の建物は、関東大震災後の1934(昭和9)年竣工、インドなどアジアの古代仏教建築のモチーフを取り入れたオリエンタルなデザイン。
写真よりも実物の方が立派、壮大、そして工事中。
※建造物保存修理工事中(~2026年12月予定)。
仏具や文具雑貨を扱うショップやおしゃれなカフェも併設の「開かれたお寺」でもあります。
建物に「強くおなり、美しくおなり」と心の中でつぶやきながら写真を撮り、小さく一礼しました。
地図を見ながらチェックポイントを探し、スマホで撮影していくのは「フォトラリー」みたい。
夏休みの自由研究を思い出しました。
旧築地外国人居留地
下調べの時に気になっていた「通称タイヤ公園」をのぞいてみると、予想以上にたくさんのタイヤがあってびっくりしました。
午後の暑い時間、遊ぶ子どものいない静かな園内にこっそり進入。
目的地を目前にして寄り道していると自覚しつつも、地面に敷き詰められたウッドチップの踏み心地が楽しくてうろうろ。
童心にかえって遊具で遊んでみたくなりましたが、ヨボヨボの肉体×猛暑で怪我でもしたら一大事、自重しました。
【聖路加国際病院トイスラー記念館】
トイスラー記念館は1933(昭和8)年竣工、中央区の区民有形文化財に指定されています。
宣教師館・宿舎として建築された建物で、宣教医師トイスラーの旧居ではないそうです。
ヨーロッパの山荘風のかわいらしい外観の洋館ですが、耐震性がある鉄筋コンクリート造。
さすが関東大震災後の建築物!
大きな窓のあるテラスには藤棚、夏の庭は緑の植物が生い茂り、どことなく「ジブリっぽい家」の雰囲気、映画「となりのトトロ」のサツキとメイの家を連想しました。
一般公開の日には、館内に入り重厚な木の内装などを見ることができるようですが、残念ながらこの日は休館日でした。
【聖路加国際病院】
聖路加国際病院(チャペル及び付属する旧病棟)は、東京都選定歴史的建造物。
旧病棟は1933(昭和8)年竣工の鉄骨鉄筋コンクリート造の建物で、アール・デコ調のモダンな雰囲気。
壁面にはモザイクタイル、チャペルにはステンドグラスなどの装飾が見られます。
高塔には十字架をいただいているそうですが、うっかり見忘れてしまいました。
恥ずかしながら「聖路加」の読みは「せいろか」だと思っていたのですが、正しくは「せいるか」、新約聖書に登場する医者の守護聖人「ルカ」が由来とのことです。
※英語はSt. Luke’s International Hospital(聖路加国際病院)。
【芥川龍之介生誕の地】
小説家・芥川龍之介の実父・新原敏三は、渋沢栄一らが設立した「耕牧舎」の東京における牛乳販売の責任者だったそうです。
芥川龍之介が生まれた1892(明治25)年当時は外国人が多い地域だったので、乳製品の需要が高かったのでしょう。
【浅野内匠頭邸跡】
「元禄赤穂事件」の浅野家の江戸屋敷があった場所とのこと。
事件を題材に脚色した歌舞伎「仮名手本忠臣蔵」が有名ですが、スピンオフ的な作品「東海道四谷怪談」(鶴屋南北作)の方が私は好きです。
築地外国人居留地は、西洋の学問や文化、先進的な技術に触れられる活気のある街、東京にある「小さな外国」だったのでしょう。
関東大震災で洋館が焼失してしまったのが残念です。
勝鬨橋(かちどきばし)
歩いていたら好奇心のエンジンがかかってきたので、少し足を延ばして隅田川を見に行くことにしました。
川に行けば大好きな橋が見える、船も見える。
時々立ち止まって水分補給し、行き交う水上バスを眺めながら川下に向かって歩いていると橋が見えてきました。
あれは、あこがれの勝鬨橋!
昔「こち亀」で見た、開かずの可動橋!
※両さんは少年時代、悪ガキトリオで閉鎖された勝鬨橋を開けようとした。
思わず駆け寄りたい気持ちになりましたが、無理は禁物。
歩いていると少しずつ近づいてくる橋を見ながら、私も開閉するところが見てみたいと思いました。
歌舞伎座
大満足してホテルに向かい、クーラーのきいた客室で一休み。
今度は散歩がてら銀座のデパ地下に行き、ディナーを調達することにしました。
愛してやまない劇場「歌舞伎座」は、一年を通して歌舞伎を上演している「歌舞伎の殿堂」。
桃山様式の堂々たる外観の劇場部分と、その背後にそびえる超高層ビル「歌舞伎座タワー」(地下4階、地上29階)にギャップ萌え(複合施設)。
劇場に入らなくても、周囲には歌舞伎グッズや和風の小物、和菓子などが買える土産物屋やショップがあります。
長い付き合いゆえ、ホームグラウンドのような安心感。
旅の一期一会(いちごいちえ)
上演中の歌舞伎座の前は人がまばらだったので、アングルやポジションをじっくり確かめながらスマホで撮影。
ふと、今年の春(2025年4月)も同じように写真を撮ったのを思い出しました。
あの日、難しい顔をして何かの本を見てはきょろきょろと周囲を見回す外国人の夫妻(推定60代)が劇場の近くにいました。
道がわからないのかな、歌舞伎が観たいのかな、声をかけてみようか、いや、道に迷うのを面白がる旅人もいるからな(例えば私)。
少し迷いましたが、おせっかいを承知で声をかけました。
「めーないへるぷゆー?」
久々の英会話とはいえ、自分の口から出た発音の劣化にぎょっとしました。
すると、女性が少し考えてからガイドブックを指差し「ワコー」と言いました。
ふむ、時計塔がシンボルの銀座のランドマーク「和光」、知ってる!
「おーばーぜあー……かむうぃずみー!」
2人ともきょとんとしてから「サンキュー……アリガトー!」と笑顔になりました。
晴海通りを一緒に歩いている時に、少し話しかけてみました。
「うぇあ、あーゆーかむふろん?……ゆあ、かんとりー?」
「ブラジッル」
「おー!ふぁーらうぇー!!」
我ながらひどい。
でも、シンプルな言葉だから下手でも案外伝わる。
目的地に到着すると「サンキューベリマッチ!」「アリガトー!」とお礼を言われました。
私も「はば、ないすとりっぷ、ばーい!」と笑顔でお別れしました。
私が家族や友人に旅先で出会った人たちのことを話すように、もしかすると彼らもブラジルで私のことを話すのかもしれません。
「トーキョーで、日本人に道案内されたよ」と。
思いがけない「旅の一期一会」は、世界中どこにでも転がっている。
迷えるブラジル人夫妻は元気にしているだろうか、と考えながら歩いていたら和光が見えてきました。
日曜日の銀座通りは歩行者天国、多種多様な人々が思い思いに銀ぶらを楽しんでいます。
グルメの宝庫、デパートまであと少し。
晴れ晴れとした気分で車道の真ん中を歩きました。
ケーキも買おう!
最終回の御礼
23回にわたり連載させていただいた一人旅マンガ+コラム「いつでも旅行日和 ~私は私と旅をする~」は、今回が最終回となります。
読んでくださり、本当にありがとうございました。
好奇心のおもむくままに一人旅した思い出を、筆のおもむくままに書かせていただきました。
懐が深いソロトリマガジンさんに心より感謝申し上げます。
一人旅は十人十色。
みなさんのこれからの一人旅が、楽しくて、安全で、素晴らしいものになりますように。
それではごきげんよう、よい旅を!


コメント
みんなのコメント
素敵なコメントをありがとうございます!
私も、ソロトリ運営として、イクコさんのオリジナリティあふれる原稿をいつも一番に読ませてもらう贅沢を味わっていました。
今後もイクコさんには何か新たな形でソロトリに関わっていただければと思っていますので、楽しみにお待ちいただけると嬉しいです☺️
またどこかで機会がありますように!