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ごきげんよう!ソロトリライター、ヤマダイクコです。
今回は2013年8月下旬のスウェーデン、首都ストックホルムの片隅で起きた、ハートウォーミング迷子ストーリーをお届けいたします。
私はカメラになりたい
生来、シャイでナーバスなインドア派です。
人当たりのいいホモ・サピエンスにあこがれているのに、過剰な自意識と警戒心が邪魔をして挙動不審に。
そんな私が目指すのは「世界ふれあわない街歩き」!
旅番組で異国の景色や人々を撮るカメラのように、風景をただただ見たい、ただただ記録したいのです。
当時はスマホを持っておらず、PHSは圏外、海外旅行中は音信不通&デジタルデトックス状態。
道に迷ったら面倒なことになります。
コミュニケーションは極力排して、安全・快適な街歩きを楽しみたい。
限られた時間を有意義に使いたいのです。
さて、スウェーデンで迎える初めての朝。
「図書館に行ってみたい。こう歩けば市場にも行けそう!」
地図を見ながら大体のコースを決め、いそいそと出かけました。
初めて見る景色、初めて歩く道。
デジカメで風景を撮り、地図を確かめながら歩いていると、少しずつ街の雰囲気に慣れていきます。
目的地であるストックホルム市立図書館が近くなった頃、ちょっぴり冒険してみたくなりました。
そこに階段があるから
私は散策中に階段を見つけると、のぼりたくなります。
旅先で荒ぶる好奇心、高低差の魔力、抗いがたし。
そしていつも途中で後悔します(運動不足のため)。
しかし、のぼりきった時の爽快感と、素晴らしい見晴らしはかけがえのないものです。
しばらく地図なしで歩いてみよう。
地図をたたんでバッグにしまい、木々が生い茂る丘の階段をのぼりました。
階段の先には、緑豊かな公園がありました。
「ストックホルム市民の憩いの場かしら?」などと考えていると、私を呼ぶ若い男性が。
4人組の少年(推定小学5年生)でした。
手には地図。どうやら道を聞いているようですが、あいにくスウェーデン語も現在地もわかりません。
なんで私に聞いたの……と見まわしたら、少年たちの近くには私と清掃業者のおじさん(ゴミ収集車を運転中)しかいませんでした。
なるほど、消去法か。
一体ここはどこなんだ?
お手上げのポーズで「Sorry, I don’t know!(ごめん、知らないんだ)」と答え、敗北感に打ちのめされつつその場を去りました。
地図の確認を続けていれば現在地がわかったのに!痛恨のミス!
「あの子たち、あんなところでぶらぶらしていて大丈夫かしら?」と自分のことを棚に上げて歩いていると、遊具や砂場のある場所で子ども連れの人々を発見。
2〜4歳くらいの子どもとその親(推定)、大きな荷物はなく、ラフな服装、リラックスした雰囲気、以上の点を勘案して地元住民の可能性が高いと推理。
昔から福祉国家と名高いスウェーデン、男性も積極的に育児をすると聞きました。
確かに、どこへ行っても子どもの世話をするお父さんだらけ。
平日の昼間に、お母さんもお父さんも和気あいあいと砂場で遊ぶ子どもたちを見守っている。
きっとここではこれが当たり前の風景なのだな。
会話が盛り上がっているところに水を差すのは心苦しい。
けれども、勇気を振り絞って声をかけました。
「ここはどこですか?道に迷いました!」
まさかの大爆笑。なんで?!
一日一善!
初対面(しかも外国)で大爆笑されるのは初めてで、びっくりしたし、恥ずかしかったのですが、不思議と嫌な感じはしませんでした。
1人が地図を指して現在地を教えてくれました。親切に感謝!
早足で引き返すと、少年たちは同じ場所にいました。
「まだいるんかい!」と思いつつも、嬉しくなって話しかけました。
「このガケ降りたら早くね?!」などと話していそうないたずらっ子たち(推定)は放置!
地図を持っているリーダー(推定)に教えましょう。
「いま、ここよ!」ドヤ!
そして、笑顔で手を振り別れました。
「おまえたち、そういうガケはのぼる時よりも降りる時の方が難しいし、とっても危ないのよ。
階段を使いなさ~い!」と念じながら。
カルチャーショック
ストックホルムの人々は、大らかな人が多かったような気がします。
この丘以外でも笑われましたが、悪意ではなく、ごく自然に愉快だから笑っている感じがして、私も愉快な気持ちになりました。
帰国から数年が経ち、彼らの大爆笑の一因は「I lost my way!」という言葉かもしれないと突然ひらめきました。
フランク・シナトラの名曲「My Way」では、我が道、我が人生を歌っていますね。
「ここはどこですか?私、人生に迷いました!」
というニュアンスで伝わったのかもしれない、と。
子どもと砂場で遊んでいたら、突然謎の外国人(私)が登場。
片言の英語で「ワタシ、ジンセイニ、マヨイマシター!」と元気いっぱいに宣言。
「まじか~!」
と爆笑してもおかしくない、と。
このような場合、日本では「困っている人を笑うのは失礼だ」と考えて、大抵は真面目に対応します。
ただ、笑顔や「それは大変だね!」という共感が、相手を安心させる(深刻な問題でないと気づかせる)こともあるのですね。
ほんのひと時でしたが、みんなで1枚の地図を囲んだり、現在地を指して教えたり
……言葉はあまり通じなくても、心が通じる瞬間があるのを感じました。
そして、現地の人たちとのふれあいを楽しむ、自分の新たな一面も発見しました。
「まちたんけん」inストックホルム
上機嫌で丘をくだり、ストックホルム市立図書館へ。
落ち着いたオレンジ色の壁、円筒がそびえたつモダンな建物は、スウェーデンの建築の父とも呼ばれるエリック・グンナール・アスプルンドによるものです。
内装・家具を含めて「これぞ北欧デザイン」!
(素敵な空間に本がいっぱい!ここに住みたい!)
円形の本棚を2階からうっとり眺めていると、見たことのある4人組の少年がやってきました。
そっとわが身を隣室にフェードアウトさせました。
次は、図書館からのんびり歩いてエステルマルム市場へ。
歴史を感じさせる建物は、外観はシンメトリーの形にレンガの赤色が美しく、館内は天井が高くディスプレイがお洒落。
生鮮食料品から加工食品まで、あらゆる食料品店や飲食店が並ぶストックホルム市民の台所です。
(素敵な空間においしいものがいっぱい!ここに住みたい!)
すると、またあの4人組がいました。
ある少年はコインをぎゅっと握りしめたまま、アイスを食べるのに夢中になっています。
「日本の子どもと同じだな」と、なんだか嬉しくなりました。
アイスが溶ける前に食べたいもんね。おいしいかい?
おつり、落とすんじゃないよ!
いつしか親戚の子を見守るような気持ちに。
どうやら私は彼らと同じコースでストックホルムを散策していたようです。
ちょっぴり冒険するつもりが予想外の展開になり、素晴らしい出会いと楽しい思い出に恵まれました。
帰国して、一つの仮説を立てました。
一人だから声をかけられやすいのかもしれないし、一人だから声をかけやすいのかもしれない。
その後の一人旅でも、私はたくさんの人と出会いました。
そして、仮説は確信へと変わっていきました。
確信はもう一つ。
あの言葉は間違っていなかった。
いつでも、私は人生に迷っています!
それではごきげんよう、よい旅を!
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